ヒトリダチ

2011年 09月 25日 ( 3 )

2011年 9月24日(土) 雨 のち 晴れ ④

秋田県北秋田市阿仁打当陣場1-39:阿仁クマ牧場

マタギ資料館から数分のところに「クマ牧場」があることが分かったので、閉園ぎりぎりでしたが行ってみることにしました。

本州に棲息するクマは「ツキノワグマ」、北海道には「エゾヒグマ」というように、はっきりと別れています。ここのクマ牧場には100頭ものツキノワグマが飼育されていました。そして、僕はクマを見るのは初めてです。

園内をひと通り周ったあと、係りの人にいろいろ聞いてみました。ここのクマは少数の野生から少しずつ繁殖させて現在の数になっているということで、殆ど野生ではないそうです。僕は、里に降りてきて帰らないクマを保護しているのかと思ってましたが、違いました。

里に降りてきたクマは基本的に「猟友会」の人たちが対応します。人に危害を与える危険性が高い時は射殺されてしまうのですが、阿仁町では「奥山放獣」といって捕らえたクマを山の奥まで運び、トウガラシ成分のクマスプレーを浴びせて逃がすことで、里に降りて来ないようにするやり方で対応しているようです。

でも、クマは早朝に栗や柿を食べに来て、人間が起きる前に山に帰ることが多く、クマが現れる場所もだいたい分かっているので、人が気を付ければ大きな問題にはなりにくいそうです。昨日のおばあちゃんの話と重なります。

係りの人はクマは増えても減ってもいないという考えでした。でも正確な答えは無く、大学や一部のグループで研究や調査はしているけれど、クマの専門家という人は殆ど居ないそうです。クマは一日に20km以上も歩くこともあり、行動範囲が広い動物なので、調査が難しいということも教えてくれました。実は謎の多いクマですが、棲み分けさえ出来ていれば謎のままでも良いかなと僕は思います。

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僕はここを見て、正直に言うとかわいそうだなと思いました。下は全てコンクリート。木や緑は無く、クマの数に対して場所が狭い。時間が来ると餌が与えられて、それの繰り返し。ここで何か調査をしているわけでもないそうです。

わいどの木の社長が言った「動物は獲って食べるもの」の意味が少しわかった気がします。野生に生き、人間に負けたら食べられる。不自由に飼われるよりよほど自然だなと思えたのです。ただこれは、自然に対する感謝の思いがあってはじめて成立することです。やはり、マタギの精神ですね。
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by nipponhike | 2011-09-25 19:40 | ■見学

2011年 9月24日(土) 雨 のち 晴れ ③

秋田県北秋田市阿仁打当字仙北渡道上67:マタギ資料館

おばあちゃんに、次の目的地までの近道を教えてもらい、マタギの里と呼ばれる阿仁町の「マタギ資料館」を見学しました。

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動物や自然との共存について考えた時、「マタギ」の生活はとても大切な事を教えてくれると思い、多くのマタギが暮らしていたといわれる阿仁町を訪れました。
温泉施設「マタギの湯」に隣接する「マタギ資料館」には、マタギの自然に対する考え方や具体的な狩猟方法を通して、自然と共存していく精神を伝えるような展示がされていました。

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これは阿仁マタギの秘伝書「山立根本之巻(やまだちこんぽんのまき)」というマタギの許可証のようなものです。これをシカリ(リーダー)が持っていることで、藩境越えて全国で自由に狩猟することを許されたといいます。

マタギが猟をする際、様々な作法の中でこの秘伝書に祈りを捧げるなどにも使われ、精神的な支えでもあったようです。地域やマタギによって、幾つかの秘伝書があります。

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マタギは、春・夏・秋は山菜やキノコを採り、冬になると集団狩猟でクマを始めとした動物を捉え、生活の糧にしていました。木の葉が無く景色が白い冬はクマが見つけやすく、冬眠で鈍くなっているため、危険を最小限に出来たからというのと、必要以上に獲らないことで数を調整していたのではないでしょうか。

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山に入ることを山立(やまだち)といいます。山立の際にも縁起の良い日、悪い日があったり、前日から身を清める作法があったり、山立では「マタギことば」を使い、里でのことばを禁じているなど、様々な決まりごとがあります。ちなみにクマは「イタズ」と呼びます。
その他にも、山の神の怒りに触れないように、オコゼという醜い魚の干し物を携帯したりなど、作法の多さに驚きました。

シカリの命令は絶対服従で、一組3人~10人で狩猟を行います。クマを捕えた時にも儀式を行い、クマの頭を北に向けて塩をふって清めるなど、山や自然に対しての信仰 の深さに厳粛な思いになります。

生きることに対して全身全霊なマタギの姿勢はとても感慨深く、自然の恵みを受けることの重みを考えさせられます。
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by nipponhike | 2011-09-25 10:08 | ■見学

2011年 9月24日(土) 雨 のち 晴れ ②

天然杉。近所のおばあちゃん

駐車場に戻って、来た道を引き返していた途中に、家の畑で作業していたおばあちゃんがいたので、この辺りの森林について聞いてみることにしました。

おばあちゃんは青森の産まれで、50年前にこちらに嫁いで来たそうです。当時のことや今のこと、いろいろお話をしてくれました。

この森では山菜が生えていて、昔は春になると山菜採りに良く出かけて、ゼンマイやキノコなどを沢山採ったそうです。

そして、今僕が走って来た道は、「ガソリンの道」だったようです。ここで言うガソリンとは機関車の事で、ガソリンで動く森林鉄道のことを「ガソリン」「ガソ」と呼んでいました。鉱山や林業が盛んだった時は、いたるところに線路があり、それは住民の移動手段でもあったそうです。おばあちゃんはガソリンに乗って嫁いできました。

クマのことを聞くと、ここ10年くらい前からクマが里へ降りてくるようになって、その原因は山に道をつくり過ぎたためだと言っていました。道路や林道が増えることで、動物の行動範囲や棲処が減ってしまうのです。そして秋田は人工林の問題も大きいと思います。

最近クマが出たか聞くと、「昨日の朝、あの山から降りて来て、川を渡ってあの家の栗を食べてただよ。」と平然と返されて驚きました。大きなオスのクマが、150mくらい先にある家の栗の木に登って、まだ熟していない栗を落として食べて帰ったそうです。でも、クマは明け方と日暮れに動くから、その時だけ気を付ければ大丈夫と言っていました。山に餌が多ければ降りて来ないし、少なければ降りてくる。その年によって違うようです。

その他にも、この辺も10月の中頃になると紅葉がとても綺麗なこと。青森のリンゴでも、弘前(ひろさき)の南にあるリンゴ園が美味しくて、フジリンゴが一番だということ。11月には真赤なリンゴ園が素晴らしいこと。そして、昔は親の言うことが絶対だから、好きな人がいてもその人とは結婚させてもらえなかったことなど、釜を持ったままいろんな事を話してくれました。

その土地に住む人の話は、直接心に届くようで記憶に強く残ります。ありがとうございました。

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秋田県の米といえば「あきたこまち」。その中でも最高のものがこの土地でつくられているそうです。土壌の下の方にある青い粘土層が、米の粘りを出していて、それがおばあちゃんの住むこの土地独特の地質なんだと教えてくれました。
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by nipponhike | 2011-09-25 00:16 | ■日記