ヒトリダチ

2011年 9月5日(月) 雨

新しい課題

昨日の夕方。知床自然センターの方に会うことが出来ました。そしてとても興味深い、僕が求めていたような話をしてくれたのです。

自然センターの方とは、今後のパン修行でお世話になるかもしれない長野県の石窯パン工房「ベッカライ麦星」の方の、前の職場で一緒だったという繋がりです。
大学院まで林業や動物について勉強したのち、知床自然センターに勤めるようになったのですが、僕が動物を守りたいことや森の現状を伝えていきたいことを話すと、その方が今まで勉強し、現場に身を置くことで、個人的に感じてきたことや考えていることを話してくれました。

「今の知床の環境は、動物園が逆転したような状態で、ウトロや他の集落の周りは電気の柵で囲まれていて、クマを始めとした動物の侵入を防ぎ、常に自然に対して警戒しながら暮らしている。」

「知床だけではなく、過疎化した村や集落では、人間の力より自然界の力が強くなってきていて、隙があればどんどん自然界に侵食されてしまう状況。みんな口には出さないけど、人間と自然(動物)は常に戦ってそれぞれの領域を確保してきた。それはどちらも生きるためにしてきたこと。」

「若い人の居ない集落では特に、生活の糧になる農作物を荒らす動物はどうしても武力で対抗しなくてはならない。でも今は銃を扱える人も少なくなってきている。都心に人が集まることで地方の力は弱まり、関心も薄いので、バランスは崩れる一方。そして、これから日本全体の人口が減っていくのは確実。」

「知床ではエゾシカの増殖が問題になっているけれど、10年後には北海道全体がこの問題を抱えることになるかもしれない。動物が少なくなってきているのか多くなっているのか、本当の所は誰も把握出来ていない。北海道や東北に関しては増えていると個人的には思っている。自然や動物の環境は地域によってだいぶ違ってくるので、一概に増えているのか、減っているのかは判断出来ない。それらの不確実な事については、専門家ほど簡単には口にしない。自然は人間が思っているより、とてもしたたかだと感じている。」

「動物・自然保護団体の中には、感情的になりすぎて、その場で実際に生活している人の立場を考えずに、強引なやり方をしている所もある。話合いで解決すべき世の中なのに、現場にいる末端の人を苦しめても何も生まれない。感情論で突き進むのは危険。」

など、人の暮らしと自然環境に関する現状を、現実的に、冷静に受け止めている貴重なお話を聞くことが出来ました。最後に言っていたことは「自分の中で感じ取ったことを大切にすること。」
驚きと確信。僕の中にあったモヤモヤが少し晴れると同時に、いろいろな課題も見えてきました。

僕がこの旅をしながら自然環境について感じてきたのは「何が本当で、何をすべきなのか?」という基本的で大切な部分の、明確な答えが見つけにくいということです。

最近のクジラの問題でも、絶滅寸前だという人もいれば、保護して増えすぎた影響で、小魚などの海洋生物が減り、人間の食料問題になると訴える人もいるようです。そのようなことが陸上の森林でも起きていて、クマが民家に現れるのを見て減っているという声もあれば増えているという声もあるのです。

でも、日本の林業が初めに発展した九州では、ツキノワグマが絶滅してしまったことは事実で、北海道の開拓の影響により、ニホンオオカミは絶滅し、シマフクロウが絶滅危惧種になっている現状があります。人工林が森の40%くらいを占めていて、その殆どが手付かずで、木の実がなるような状態では無いのに加え、山の機能の一つである保水力の低下による土砂崩れ、水不足の原因になっていることも分かっています。これらは全て人の手によるものです。

自然保護とは何か、人と動物の共存とは何か。

今までは森林や動物について漠然と調べていましたが、もう少し自分が思うことを整理して、勉強していく必要があるようです。
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by nipponhike | 2011-09-05 21:10 | ■見学